うつ症状の原因は、セロトニンの不足やドーパミンの分泌異常などとよく言われていますが、本当にそうなのでしょうか?
うつ症状の原因がドーパミンの分泌異常だとしたら、ドーパミンの濃度を整える作用がある抗うつ剤などを服用しても一向に良くならないのは何故なのでしょうか。
今回は、うつ病の原因とされているドーパミンという物質と、ドーパミン不足や過剰がうつ症状に与える影響、ドーパミン濃度の整え方、ドーパミン不足以外のうつ症状の原因などを詳しく解説します。
ドーパミンとうつ病の関係については、以下の動画でも解説しています。
https://youtu.be/CJNJFqoyEeU
目次
ドーパミンってどんな物質?
ドーパミンとは、脳の神経伝達物質の1つで、「フェニルアラニン」と呼ばれるアミノ酸を摂取すると脳内で合成されます。
ドーパミンは神経を興奮させる作用があり、喜びや快楽などを感じさせる神経伝達物質です。脳内の報酬系という神経系に深く関わっています。
私たちが何かをしようという「意欲」を持ったときにドーパミンが出て、それが「楽しい」という「快楽感」につながっていると考えられています。
ドーパミンが不足するとうつ病になる?
うつ病が発症すると、気分の落ち込みや倦怠感など、様々な不調が起こります。うつ病が発症する要因についてまだ詳しく分かっていませんが、脳内の神経伝達物質の低下や分泌過剰で起こると言われています。
神経伝達物質には、やる気や意欲をだすノルアドレナリンやドーパミン、気分を落ち着かせるセロトニンなどがあります。
正常な状態では、これら神経伝達物質が十分に放出され、受容体に取り込まれて作用していますが、何らかの原因によってこれらの神経伝達物質の分泌量が減ってしまうと、意欲ややる気が低下し、うつ病になるとされています。
また、大切な人や物を亡くしたり、環境の変化、人間関係のトラブルなど、大きな精神的ストレスがかかると、体がストレスに負けてしまい、心身に不調をきたすことがあります。
人がストレスを受けると、副腎から抗ストレスホルモンが分泌されますが、この抗ストレスホルモンの材料であるタンパク質やビタミンCの摂取量が十分でないと、抗ストレスホルモンの分泌量が足りず、ストレスから立ち直れなくなってしまうことがあるようです。
ドーパーミンの分泌異常で引き起こされる病気としては、躁うつ病や双極性障害があります。双極性障害とは、気分が落ち込むうつ症状と気分が上がりすぎる躁うつ病を交互に繰り返してしまう病気です。
躁状態になると、攻撃的になったり、衝動が抑えられなくなって買い物や散財してしまったりするなど、人生に破滅的な影響を与えかねない怖い病気です。
これらの病気の原因にはドーパミンの分泌異常や濃度が関係あるとされ、ドーパミンの働きや分泌を整えてくれる精神薬が開発されています。
ドーパミンの分泌を整える薬は
- ドーパミン拮抗薬
- ドーパミン放出阻害薬
- ドーパミン作動薬
- ドーパミン部分作動薬
などがあります。
これらは、ドーパミンの濃度が高い場合はその濃度を減らし、逆にドーパミン濃度が高い場合はその状態を抑制するなど、症状によって適切な薬が処方がされます。
うつ症状や躁うつ病がドーパミンの分泌異常であるなら、これらの薬を飲めば症状がよくなるはずですよね。しかし、これらの薬でドーパミン濃度を整えても、一向に良くならないのは何故なのでしょうか。
それは、ドーパミンの濃度以外にも、その他の脳の神経伝達物質の濃度を同時に整えてあげる必要があるからです。
脳の神経伝達物質をバランス良く整える事が重要!
脳の神経伝達物質は、ドーパミンに限らず様々な物質が互いにバランスを取っています。
ドーパミンが出過ぎた場合にはこれを抑制する神経伝達物質が分泌されたり、逆に分泌量が足りなければ同じ作用がある他の神経伝達物質を分泌してバランスを整えるなど、常に相互作用でバランスを取っているのです。
つまり、うつ症状や躁うつ病を改善するには、ドーパミンの分泌を整えるだけで無く、脳全体の神経伝達物質のバランスを整えてあげる事が重要なのです。
そのためには、脳の神経伝達物質の仕組みを理解しましょう。
脳の神経伝達物質は、興奮系のドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、グルタミン酸などがあり、抑制系ではGABAが大半を占めています。この2つのバランスを調節しているのがセロトニンです。
シーソーで例えると下図のような役割を担っています。
うつ症状を発症している方は、ドーパミンだけでなく、セロトニンやGABAの分泌量も減っています。ですので、ドーパミンだけを整えても、肝心のシーソーのバランスが整いません。
うつ症状を改善するには、これらの神経伝達物質をバランス良く分泌できるようにする事が重要です。
その為には、薬で調節するのでは無く、普段の食事から脳の神経伝達物質の材料となる栄養素をまんべんなく摂取することが重要です。
この神経伝達物質の材料となるのが、牛肉などの「タンパク質」なのです。なぜ、タンパク質と脳の神経伝達物質が関係あるのでしょうか。
それは、肉を摂取すると、胃酸などで分解されてアミノ酸になり、このアミノ酸が脳の神経伝達物質の材料になるからです。
脳の神経伝達物質の材料をまんべんなく摂取することが鍵
下図は、タンパク質が脳の神経伝達物質に分解、合成されるまでの過程を表したものです。
タンパク質(プロテイン)を摂取すると、いくつかの工程を経てアミノ酸に分解されます。脳神経伝達物質で重要なのは、「L-グルタミン」「L-フェニルアラニン」「L-トリプトファン」と呼ばれるアミノ酸です。
このアミノ酸は、ビタミンやミネラルを元に、神経伝達物質である「ドーパミン」や「セロトニン」「GABA」に合成され、消費されていきます。
特に注目して欲しいのが、図左側にある「L-グルタミン酸」から「GABA」に合成される経路です。先ほども解説したように、興奮系の神経伝達物質であるグルタミン酸から、抑制系のGABAに合成されています。
つまり、脳内で興奮系のグルタミン酸の濃度が増えれば、同時に抑制系のGABAも増えてバランスを取るのです。このような絶妙なバランス調整は、脳の神秘としか言い様がないですよね。
しかし、実際にはグルタミン酸からGABAへの反応がスムーズに行われていないケースが多いのです。興奮系が増えるのに抑制系が作られないと、イライラや緊張感が続き、躁うつ症状を引き起こしてしまうのです。
このように、神経伝達物質は互いにバランスを取りながら分泌されるので、どれか特定の神経伝達物質のバランスを整えてもあまり意味がありません。うつ症状や躁うつ病を根本から改善するには、脳の神経伝達物質の材料となるアミノ酸をバランス良く含んだタンパク質を摂取することが重要なのです。
そして、アミノ酸から神経伝達物質に合成する時には、補酵素としてビタミンやミネラル等が必要になりますので、これらも同時に摂取するように心がけましょう。
例えば、L-グルタミンからL-グルタミン酸に合成する時には、ナイアシンが必要になります。また、L-グルタミン酸からGABAへ合成する時には、ビタミンB6が必要になります。
これらの栄養素が足りなければ、どれだけ食べたところでアミノ酸が神経伝達物質に合成されることはなく、そのまま体外に排泄されてしまいます。
このように、脳の神経伝達物質のバランスを整えるためには、タンパク質以外にもビタミンやミネラルのも必ず摂取するようにしましょう。
うつの原因は、セロトニン、ドーパミン以外にも様々
うつ病の原因は、セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどの分泌不足と言われている以外にも、以下のような原因からうつ症状が現れることが分かっています。
- 質的な栄養失調
- ストレスによる腸内環境の悪化
- 鉄分不足
- 薬の副作用
- ピロリ菌の感染
- 腸カンジダの感染
- 糖質の取り過ぎ(糖尿病、血糖調節障害)
- 腸の不調
- 脳の慢性炎症
- ホルモン障害
- 更年期障害とPMS(月経前症候群)
- アジソン病、クッシング症候群、ストレスによる副腎疲労
- 甲状腺機能障害
- 認知症(アルツハイマー)
- 妊娠、産後うつ
これは、脳の神経伝達物質に限らず、質的な栄養失調であったり、ホルモンバランスの乱れであったり、細菌に感染していたりするなど、多岐にわたります。
ですので、ご自身のうつ症状の原因が、セロトニンやドーパミンの分泌異常以外の可能性もあることを疑った方がよいでしょう。
これらうつ症状の具体的な原因については、うつ病が発症する原因とは? メカニズムと要因を解説で詳しく解説していますので参考にして下さい。
ドーパミンが不足しているからうつ病になる? ドーパミンとうつの関係と分泌量を増やす方法とはまとめ
以上が、ドーパミンの分泌異常によるうつ症状の関係と、分泌量を整える方法、これ以外のうつ症状の原因でした。
ここまでの流れをまとめると……
- ドーパミンの過不足が原因でうつ病や躁うつ病が発症すると言われている。
- ドーパミンは、喜びや快楽、意欲を司る神経伝達物質
- ドーパミンの分泌を整えるだけで無く、その他の神経伝達物質も同時に整える事が重要
- 脳の神経伝達物質の材料であるアミノ酸をまんべんなく摂取することが鍵
- ビタミンやミネラル等の補酵素の摂取も重要
- セロトニンやドーパミン不足以外にも、様々な原因でうつ症状が発症する。
という感じになります。
うつ症状の原因はセロトニン不足やドーパミンの分泌異常という見方が依然強いですが、その原因は多岐にわたります。
ですので、ドーパミンの分泌異常でない人が抗うつ薬などのドーパミンの濃度を整える精神薬を飲んでも効果が無いばかりか、副作用や薬物依存、離脱症状などで苦しむことにもなりかねません。
あなたが「ドーパミンの分泌異常からくるうつ病」という確証が得られない限りは、安易に抗うつ薬などを服用するのは控えた方がいいでしょう。
まずは、ドーパミンの分泌異常以外のうつの原因を病院などで検査して特定すると共に、プロテインやサプリメントなどで十分な栄養補給をすることをオススメします。
あなたに何の栄養が足りていないのかは、うつぬきやのコンサルティングでアドバイスしていますので、よろしければご利用下さい。