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魚を食べるとうつ病の予防、改善につながる! 一日の最適な摂取量とは?

魚を食べると頭に良いとよく言われていますよね。頭に良いなら、うつにも良いのでは無いかと疑問に思う方も多いと思います。

そこで今回は、魚を食べるとうつ症状の改善や予防に繋がるのかについてや、具体的にどんな栄養素がうつ症状の改善、予防に繋がっているのかを分子整合栄養医学の観点から詳しく解説します。

目次

魚を食べるとうつ病リスクが低減

まず最初に、魚を食べるとうつ症状の改善や予防につながるかについてですが、これについては実際に以下のような研究結果があります。

魚介を多く食べる人は、そうでない人と比べて、うつ病の発症率がおよそ半分に減ることが、国立がん研究センターや慶応大学などの調査で分かりました。青魚に多く含まれる「n-3系脂肪酸」による予防効果が考えられるとされています。

魚介類を1日111g食べるグループでうつ病のリスクが低下

1,181人のうち、95人が精神科医によってうつ病と診断されました。今回の研究では、対象者をアンケート調査結果から算出した魚介類(さけ・ます、かつお・まぐろ、あじ・いわし、しらす、タラコといった魚卵、ウナギ、イカ、タコ、エビ、アサリ・シジミといった貝類、かまぼこといった加工食品、干物、など19質問項目を使用)と、n-3系脂肪酸の摂取量で4つのグループに分け、最も摂取量が少ないグループに比べた時の、その他のグループでのうつ病のリスクを調べました。その結果、1日に57g(中央値)魚介類を食べるグループと比較して、1日に111g(中央値)魚介類を食べるグループでうつ病リスクの低下がみられました。同様にn-3系脂肪酸摂取とうつ病との関連では、エイコサペンタエン酸(EPA)を1日に200mg(中央値)摂取するグループと比較して、1日307mg(中央値)摂取するグループ、また、ドコサペンタエン酸(DPA)を1日に67mg(中央値)摂取するグループと比較して、1日123mg(中央値)摂取するグループでうつ病リスクの低下がみられました(図)。他のn-3系脂肪酸とうつ病との明らかな関連は見られませんでした。魚介類およびドコサペンタエン酸(DPA)とうつ病の関連は、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、うつ病の既往で統計学的に調整しても変化はありませんでした。

今回の検討から魚介類・n-3系脂肪酸摂取とうつ病には、とればとるほどリスクが下がる、というような関連ではなく、ある量でリスクが下がり、それ以上とると影響がみられなくなることが示されました。中年期の魚介類・n-3系脂肪酸摂取が精神科医による高齢期のうつ病診断と関連していたというのは世界初の結果であり、魚摂取と精神科医による診断ではないうつ病との関連をまとめたメタアナリシスの結果を支持するものでした。ある量以上をとると影響が見られなくなる理由は不明ですが、魚介類摂取量が多い人は野菜摂取量が多く、また、炒めて調理している傾向が強いことも報告されていることから、n-6系不飽和脂肪酸(サラダ油に含まれ、炎症を惹起する)の摂取量が増えたことで、n-3系脂肪酸の予防的効果が打ち消されたのかもしれません。

https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/7983.html

このように、魚に含まれている油の一種である、DHA・EPAがうつ症状と何らかの関係性がある事が分かっています。

分子整合栄養医学の観点でも、魚油に含まれているオメガ3系脂肪酸と、サラダ油に含まれているオメガ6系脂肪酸のバランスが、うつ症状の改善に関係しているとされています。

オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸のバランスが重要!

油には、動物性に含まれている脂や、植物に含まれている油など、様々な油がありますが、今回は魚に含まれているオメガ3系脂肪酸と、サラダ油などに含まれているオメガ6系脂肪酸を主に解説していきます。

オメガ3系脂肪酸とは魚油などに多く含まれているDHAやEPA、エゴマ油、アマニ油、ナッツ類に含まれているα-リノレン酸もオメガ3系脂肪酸の1つです。

もう一つのオメガ6系脂肪酸とは、米油、サラダ油、ベニバナ油、大豆油、コーン油などに多く含まれているリノール酸が多い油です。

これら2つの油は必須脂肪酸とよばれ、体内では作り出すことが出来ない油になります。ですので、どちらも摂取しなければならないのですが、問題はオメガ6系脂肪酸であるリノール酸を取り過ぎることによって、慢性炎症の原因になってしまうことです。

この炎症が脳に影響を与え、うつ症状が発生するのでは無いかと言われています。ですので、炎症を抑えることはうつ症状の改善に繋がると言えるのです。

リノール酸の取り過ぎは、慢性炎症の原因となる

リノール酸は、摂取すると生体内のさまざまな生理活動を調節したり、影響を与えたり、活性化したりするホルモンや神経伝達物質に変換されます。

その主な利用法が、体内でのエネルギー源と、炎症促進作用、炎症抑制作用です。

リノール酸(オメガ6系脂肪酸)の取り過ぎによって、炎症抑制作用よりも炎症促進作用が強まってしまうと、慢性炎症の原因となるのです。

多価不飽和脂肪酸の、ω-6系とω-3系のバランスが乱れることが、アレルギーなどの炎症性疾患を促進していると考えられています。ω-3系の不飽和脂肪酸が、炎症を直接抑制することもわかってきました。

アブラ(脂肪酸)のうち、多価不飽和脂肪酸はヒトの身体の細胞膜の構成成分です。状況によって細胞膜から切り離され、炎症を起こしたり静めたりする生理活性物質(エイコサノイド)になります。

 

 

炎症は、皮膚で起きれば皮膚炎に、血管で起きれば動脈硬化等の原因になります。

現代の日本人は、ω-6系のリノール酸を非常に多く摂取していると言われています。ω-3系の脂肪酸を積極的に摂取してバランスを良くし、炎症を抑制しましょう。また、EPAには中性脂肪などの脂質代謝を改善する働きが、DHAには脳機能を改善する働きがあります。EPAとDHAは協力して働くので、一緒に摂ることが望ましいと言えます。

https://www.orthomolecular.jp/nutrition/fatty-acid/

図のように、リノール酸は炎症促進作用があるアラキドン酸に多く変換されてしまいます。

炎症反応自体は、体にとって必要な反応なので避けることは出来ません。風邪を引いたり怪我をしたときなど、炎症を起こして体を守ります。必要なときに炎症反応を起こせないと、免疫力が落ちてしまって命を落としかねません。

問題なのは、炎症を起こした後に、速やかに炎症を抑える働きを引き出せないことです。アトピーやリウマチなど、慢性的に痛みや肌荒れが治らないのは、この炎症を抑える働きが弱まってしまっているからです。

ですので、慢性的な炎症があったり、うつ症状などで脳に炎症があるような場合は、オメガ6系脂肪酸(米油、サラダ油、ベニバナ油、大豆油、コーン油)の摂取は控えていくことが望ましいと言えます。

そして、この炎症を抑えるためには、炎症抑制作用のあるオメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸のバランスが重要になります。

脂質はバランスが重要

上述したように、サラダ油などに含まれるリノール酸(オメガ6系脂肪酸)を摂取すると、大半が炎症促進作用として使われてしまいます。

この炎症を抑えてくれる働きをするのが、魚に含まれているDHA・EPAなどのオメガ3系脂肪酸です。

このオメガ3系脂肪酸は、オメガ6系脂肪酸と違い、体内での利用法はエネルギー源と炎症抑制作用です。リノール酸のように、炎症促進作用はありません。

ですので、リノール酸などのオメガ6系脂肪酸をエネルギー源に起こした炎症を、DHA・EPAなどのオメガ3系脂肪酸のエネルギーで速やかに鎮静化出来ることがベストと言えるでしょう。

この2つの脂肪酸は、細胞膜に取り込まれる部位が同じなので、同じ場所の取り合いをしています。炎症を抑えるためには、この2つの油のバランスを変えてあげることがポイントです。

2つの脂肪酸は、必須脂肪酸なのでどちらかを排除することは出来ません。食事から摂取した比率が、そのまま体内の脂肪酸比率になってしまうため、意識的にDHA・EPAなどのオメガ3系脂肪酸を摂る必要があります。そして、意識的にリノール酸などのオメガ6系脂肪酸を避けることも重要です。

サラダ油などが使われた揚げ物には、オメガ6系脂肪酸が多く含まれているので、これが足りない場合を除いて意識的に排除すべきでしょう。

「必須脂肪酸なら、摂取しないといけないのでは?」 と思うかもしれませんが、現代の食事では、このオメガ6系脂肪酸を想像以上に摂取しています。

米油、サラダ油、ベニバナ油、大豆油、コーン油などはオメガ6系脂肪酸で、炒め物や揚げ物に必ずと言っていいほど大量に使われています。

逆に足りないのは、オメガ6系脂肪酸です。慢性炎症を抑えるには、オメガ3系脂肪酸を多く摂るよう心がけましょう。

一日一回はアジやサバ、サンマなどの青魚を食る、足りない分はDHA・EPAのサプリで補うのがオススメです。

魚は優秀なタンパク源!

上述したように、魚の油には、脳の炎症を抑えてくれるオメガ3系脂肪酸が多く含まれています。

しかし、うつの原因は油のバランスだけではありません。脳の神経伝達物質のバランスが崩れても発症してしまう場合があるのです。

うつ症状でよく言われるのが、セロトニンの分泌量が減少してしまうことで、うつ病が発症するとされています。

そして、減少したセロトニンの分泌量を増やすために、セロトニンの材料となるトリプトファンを含む食べ物(ピーナッツ、牛乳、ヨーグルトなど)を多く摂取しましょうと言われています。

しかし、うつ症状はセロトニンの分泌不足だけではありません。その他の神経伝達物質の分泌も減少してしまっているのです。

ですので、トリプトファンだけを意識して摂取しても、ほとんど意味が無いのです。

トリプトファンだけ摂取してもうつ症状は改善しない

トリプトファンは日常食べているものに多く含まれています。白米には、およそ82mg、パスタにはおよそ140mg、そばにはおよそ170mgと、ピーナッツや牛乳などに比べて多く含まれています。ですので、基本的にトリプトファンが不足することはありません。

それでは、なぜトリプトファンを日常的に摂取しているにも関わらず、うつ症状が発症してしまうのでしょうか。

それは、うつの原因はセロトニンだけではないからです。

脳の神経伝達物質は、興奮系のドーパミン、抑制系のGABAがあります。この2つのバランスを調節しているのがセロトニンです。

シーソーで例えると下図のように、支点の役割を担っています。

うつ症状を発症している方は、セロトニンだけでなく、ドーパミンやGABAの分泌量も減っています。ですので、セロトニンだけを補っても、肝心のシーソーのバランスが整いません。

うつ症状を改善するには、これらの神経伝達物質の材料となる栄養素をまんべんなく摂取することが重要です。

この神経伝達物質の材料となるのが、魚などの「タンパク質」なのです。なぜ、タンパク質と脳の神経伝達物質が関係あるのでしょうか。

それは、肉や魚などを摂取すると、胃酸などで分解されてアミノ酸になり、このアミノ酸が脳の神経伝達物質の材料になるからです。

下図は、タンパク質が脳の神経伝達物質に分解、合成されるまでの過程を表したものです。

 

https://www.orthomolecular.jp/nutrition/protein/

タンパク質(プロテイン)を摂取すると、いくつかの工程を経てアミノ酸に分解されます。脳神経伝達物質で重要なのは、「L-グルタミン」「L-フェニルアラニン」「L-トリプトファン」と呼ばれるアミノ酸です。

このアミノ酸は、ビタミンやミネラルを元に、神経伝達物質である「ドーパミン」「セロトニン」「GABA」に合成され、消費されていきます。

魚はタンパク質が豊富に含まれているので、この神経伝達物質の材料になる事が期待できます。このほか、タンパク質から神経伝達物質を合成する際は、補酵素としてビタミンやミネラルなども欠かせません。

例えば、L-トリプトファンから5-HTPに合成する時には、葉酸、鉄、ナイアシンが必要になります。鉄分が足りなければ、どれだけ食べたところでトリプトファンがセロトニンに合成されることはなく、そのまま体外に排泄されてしまいます。

そこで、サンマ、アジ、イワシなどを内臓や骨ごと食べることによって、ビタミンやミネラルも補給することが出来ます。

また、マグロの赤身には鉄分が多く含まれているので、鉄分も同時に補給することが出来ます。魚は、タンパク質とビタミン、ミネラルをバランス良く摂取出来る優秀な食べ物なのです。

一日にどのくらいの魚を食べれば良い?

先ほども解説したように、魚のタンパク質は脳の神経伝達物質の材料になる事が期待できます。また、魚油のDHA・EPAはうつ症状の原因となる脳の慢性炎症を抑えてくれる働きが期待できます。

「それなら、毎日大量の魚を食べればいいのでは?」と思うかもしれませんが、魚を食べたら食べただけうつの改善に効果があるというわけではありません。

それは、上述したように脂質はバランスが重要であることと、食事はバランス良く摂取する必要があるからです。

他にも、DHA・EPAが多く含まれている魚、あまり含まれていない魚や、重金属や放射性物質が多く含まれている魚がいます。

つまり、「食べると良い魚」と「あまり食べない方が良い魚」というものがあるのです。魚を選ぶときは、食べると良い魚を選ぶようにしましょう。

食べると良い魚

魚には色々種類があり、DHA・EPAが多く含まれている魚もいれば、あまり含まれていない魚もいます。ですので、魚を食べるときは以下の魚を参考に食べるようにしましょう。

  • アジ
  • サンマ
  • カツオ
  • サバ
  • マグロ
  • サケ

あまり食べないほうがいい魚

対して、あまり食べない方が良い魚というのもあります。それは、食物連鎖の頂点に君臨するような魚であったり、海の底をすみかとしている魚です。

これらの魚は重金属や放射性物質など、有害な物質を体内に貯えている可能性が高いので、なるべく避ける方がいいでしょう。

  • タイ
  • マグロ
  • ヒラメ・カレイなど
  • 深海魚
  • サメ・クジラ

基本的にはどの魚にも微量の重金属や放射性物質は含まれているので、気にしすぎると何も食べられなくなってしまいます。

ですので、これらの物質が少ない魚を選んだり、メリットとデメリットを吟味して食べるのが良いでしょう。

食事はバランスが重要!

リノール酸は、炎症を引き起こす作用があるとして、避けるべきと解説しましたが、だからといって、魚ばかり食べてDHA・EPAだけを摂ると、逆にこれらの働きが鈍くなってしまうことが分かっています。

リノール酸やDHA・EPAも体内で作り出せないので、バランス良く摂取する必要があります。このバランスは、SMP比と呼ばれる、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸を3:4:3で摂取することが理想と言われています。

飽和脂肪酸は、主にバターや肉などの動物性脂質の事です。一価不飽和脂肪酸は、ひまわり油、サフラワー油、オリーブオイルなどに多く含まれているオレイン酸です。多価不飽和脂肪酸は、この記事で何度もお伝えしている魚油や米油、サラダ油、ベニバナ油、大豆油、コーン油などです。

魚だけを食べるのでは無く、色々な食べ物から栄養を摂取することがうつ病の改善に最も効果的と言えるでしょう。

これを前提に考えると、魚の摂取量は、朝食にサバ缶一個を食べるか、夜に刺身や焼き魚などを食べる程度で良いと思います。足りない分はサプリメントで補うのがいいでしょう。

後は、唐揚げなどの揚げ物を多く食べた日は、DHA・EPAのサプリメントをいつもより多めに飲むなどして、バランスを整えてあげれば十分です。

この他、タンパク源を魚だけにしようとすると、牛肉や豚肉、鶏肉などに比べてコストが高くなります。先ほども解説したように、魚には重金属や放射性物質などの影響もありますので、タンパク源も魚にこだわらず、牛肉や豚肉、鶏肉など様々な食べ物から摂取するように心がけましょう。

魚を食べるとうつ病の予防、改善につながる! 一日の最適な摂取量とは?まとめ

以上が、魚を食べるとうつ症状の改善、予防に効果があるかどうかや、具体的にどのような栄養素が影響をしているかについてでした。

ここまでの流れをまとめると・・・

  • 魚を食べるとうつ症状の予防、改善に繋がる
  • 魚に含まれるDHA・EPAが脳の炎症を抑えてくれる
  • DHA・EPAだけを摂ってもあまり意味が無く、他の油とのバランスが重要
  • 魚は脳の神経伝達物質の材料となるタンパク質が豊富
  • 魚の内臓や骨には、脳の神経伝達物質を合成する手伝いをするビタミン、ミネラルが豊富
  • 魚の種類によっては食べない方が良い魚もある

という感じですね。

魚を食べれば食べるほどうつに効果があるという訳では無いので、朝にサバ缶を1つ食べる程度で十分だと思います。

昼や夜は、なるべく肉や野菜などをバランスよく食べるのがオススメです。

毎日毎日魚ばっかり食べると飽きてしまうので、なんでもほどほどがいいですね。足りない分は、サプリメントで補うのがいいでしょう。

どのサプリメントを飲んだら良いのかについては、うつ病の改善には何のサプリメント飲むといい? 分子栄養医学の観点からオススメのサプリを紹介!で詳しく解説しているので参考にしてみて下さい。

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