ネット上では、コーヒーがうつに良いとされている記事があったり、逆にうつに悪いと言われている記事があったりして、どちらが正しいのか分からないですよね。
もし本当にコーヒーがうつ症状に良いなら、毎日3~4杯は飲みたいところですが、実際の所デメリットも相応にあります。
今回は、コーヒーを飲むことでうつの改善に繋がるのか? やうつ症状を引き起こすと言われている理由なども含めて、分子整合栄養医学の観点から解説したいと思います。
目次
コーヒーがうつに良いとされている意見
ネットでは、コーヒーがうつ症状の改善や予防に一定の効果があるとされる研究結果が書かれています。
具体的には以下のような記事です。
米国人女性5万人を10年間、追跡調査した研究で、コーヒーを1日4杯以上飲む女性では、うつの割合が20%減少するとの結果が示された。
10年間の追跡期間中、2,607人がうつを発症した。コーヒーの摂取が週に1杯以下の女性に比べ、うつ発症リスクは、1日2~3杯グループで15%減、1日4杯以上グループで20%減と低下していった。カフェイン抜きのコーヒーやお茶、清涼飲料、チョコレート飲料を飲む女性では、抑うつの発症リスクとの関連はみられなかった。
調査を開始した当初にうつ傾向ではなかった女性が、その後のコーヒーによるカフェイン摂取量増加によって、うつの発症を低減されていたが、Lucas氏らはそのことが直接に、カフェインがうつリスク低減に有効であるということを意味するものではないと指摘している。
そのうえで、カフェインが保護作用をもっている可能性が示唆されており、コーヒーの摂取によるうつの低下を示した過去の研究結果と一致していると結んでいる。
http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2011/001873.php
このように、コーヒーに含まれているカフェインがうつ病の予防や改善に効果があるとされており、その理由はカフェインの保護作用でないかと言われています。
カフェインの保護作用がうつ症状とどのような関係があるのかについてまだ詳しく分かっていませんが、以下のような保護作用があるようです。
カフェインはアデノシンA2a受容体拮抗薬なので、ドパミン神経をアデノシンから保護してくれます。珈琲は多量のカフェインを含んでいるので、パーキンソン病の予防になると考えられて、カリフォルニア州サンノゼのカイザーパーマネンテ病院で、珈琲による治験が進行中とのことです。結果はまだ出ておりません。
カフェインは神経細胞以外の細胞も保護してくれます。事前にカフェインを投与したマウスは、肝臓毒リポポリサッカライド(LPS)を注射しても死ぬことはなく、肝細胞の逸脱酵素(GOTとGPT)が高値を示すこともありません。珈琲と肝機能の関係を調べた疫学調査結果とも一致しています。
http://www.vividlady.com/IANA/save/coffee.html
つまり、コーヒーのカフェインがうつに良いと言うよりは、「カフェイン」が何らかの保護作用をしてうつ症状が改善しているのではないかと考えています。
コーヒーがうつに悪いとされている意見
一方、このカフェインがうつには悪いとされている意見もあります。
・うつ病はアドレナリンやセロトニンなどの脳内神経伝達物質の異常で起こる。コーヒーに含まれるカフェインは適量であれば問題はないのが、過剰に摂取してしまうと交感神経を刺激することによって鬱を悪化させる可能性がある。
・コーヒーの飲み過ぎでカフェイン依存症になると、理由もなく不安になったり、落ち込んだりする可能性があるという。これが「軽うつ」の症状とよく似ている。
・カフェインを摂取すると脳内神経系で興奮を引き起こす「アドレナリン」が分泌される。カフェインの摂取過多によっては、アドレナリンが出すぎて、不眠症状やイラつきとかの症状が出やすくなる。
・抗うつ剤は精神を落ち着ける脳内物質「セロトニン」の働きを助ける。対してコーヒーはアドレナリンの働きが活発化する。抗うつ剤とコーヒーの効果は相反するので、同時の摂取は控えた方がいい。
このような意見は、分子整合栄養医学でも同じ事が言われています。カフェインの覚醒作用が神経伝達物質のバランスを崩し、イライラや不安感、不眠などの心身の不調に繋がってしまうのです。
他にも、コーヒーには以下のようなデメリットがあります。
カフェインアレルギー
極めてまれな事例ですが、カフェインに対するアレルギーも報告されています。具体的には、カフェイン摂取後にアナフィラキシーを引き起こしてしまうことです。
アナフィラキシーというのは、かゆみ、じんましん、くしゃみ、せき、むくみなど皮膚や呼吸器、粘膜にあらわれるアレルギー症状です。
さらに血圧低下や意識障害を伴ってぐったりする場合などをアナフィラキシーショックといいます。
アナフィラキシーは最悪の場合、命を落とす危険性もありますので、注意が必要です。
カルシウムが不足しやすい
コーヒーに含まれているカフェインは、カルシウムの吸収を妨げてしまい、尿として一緒に排出されます。利尿作用というプラス面の裏返しとして、このようなマイナス面があるのです。
コーヒーをよく飲んでいる人は「骨粗しょう症」になりやすいと言われていますが、これは一日のカルシウム摂取量が十分でないと引き起こされるようです。
珈琲をカフェイン含量で換算して詳しくみてみた結果、 1 日 330mg 以上のカフェイン(レギュラー珈琲 3〜4 杯以上)を摂取した人で、かつカルシウムの 1 日摂取量が 700mg (日本人の 1 日所要量は 600mg )を下回っていた人にリスクが生じることがわかっています。
つまり、うつ病防止のために1日3〜4杯以上のコーヒーを飲む場合は、700〜1000mg以上のカルシウムを摂取しないとカルシウムが欠乏してしまう恐れがあるのです。
貧血になりやすい
コーヒーに含まれるタンニンは、鉄分の吸収を阻害する作用が確認されています。
タンニンは鉄と結合しやすいため体の中でタンニン鉄というものを作り出します。このタンニン鉄は水に溶けにくい性質を持っているため腸で吸収されにくくなり、せっかく鉄分を摂取しても体内に取り込まれなくなってしまうのです。
つまり、タンニンの摂取が多いと鉄の吸収が阻害されやすく、吸収を阻害された鉄分は、尿と一緒に体外へ排出されるので、貧血が起こりやすいと言われています。
この鉄分は、脳の神経伝達物質を合成する手助けをしているので、鉄分が不足するとうつ症状を発症してしまう場合があります。
カフェイン過敏症という個人差がある
カフェインは、人によって作用の感じ方が違います。適量よりも少ない摂取量なのに不快な症状を感じたり、いつまでも覚醒作用が抜けない場合は、カフェインの感受性が高いということです。
このような人は、適量を少し下げて飲むようにするか、控えるなどしなければなりません。
ちなみに、感受性の違いは子供が高く、女性より男性が高いといわれています。
分子整合栄養医学の観点から見るうつの原因とコーヒーの関係
分子整合栄養医学では、体や栄養、うつを引き起こしている原因を、「分子レベル」で見ていく事で、体にどのような栄養があるのかを知り、対処をしていきます。
コーヒーを摂取することによって、コーヒーの成分が「分子レベル」で体にどのような影響を与えてうつ症状を引き起こすのかを見てみましょう。
うつ病の原因とは?
うつ病の原因は、脳の神経伝達物質であるセロトニンや、ドーパミン、GABAなどの分泌量が低下することで起こると言われています。
上図は、正常な人の神経伝達物質の分泌量と、うつ症状がある人の分泌量です。正常な人はセロトニンやノルアドレナリン等の神経伝達物質が十分に分泌され、意欲や気力、食欲や性欲などがわき上がっています。
しかし、うつ症状がある人はこれらの分泌量がほとんど無くなっているため、気力が起こらず、うつ症状になってしまっています。
この分泌量が低下する主な原因は、食生活の悪化です。現代の食事は、ジャンクフードやパン、お菓子など、炭水化物や糖質に偏ってしまっています。
この食生活の偏りによって脳の神経伝達物質の材料が不足し、作られなくなって分泌量が減ってしまうのです。
この神経伝達物質の材料が何から出来ているのかを表したのが以下の表です。
表は、プロテイン(タンパク質)から脳の神経伝達物質であるGABAやノルアドレナリン、セロトニンなどに分解、合成されるまでの過程を表したものです。
タンパク質は、胃酸とカルシウム、ビタミンCによってL-グルタミンやL-フェニルアラニン、L-トリプトファンなどに分解されます。
そして、葉酸や鉄、ナイアシンなどの補酵素を使って合成を繰り返し、脳の神経伝達物質を作り出して消費しています。
現代の食生活は炭水化物過多のジャンクフードばかりなので、タンパク質が足りていません。タンパク質が足りていないと、神経伝達物質を作り出すことが出来ず、分泌量が減ってうつ症状を引き起こすのです。
うつの原因とコーヒーの関係とは?
ここまで、タンパク質不足が脳の神経伝達物質不足を引き起こし、うつ症状が発生してしまう事を解説してきました。
それでは、この原因とコーヒーにはどんな関係があるのでしょうか。
コーヒーのデメリットとして、カフェインによるカルシウム吸収阻害やタンニンによる鉄分吸収阻害がありますよね。
このカルシウムと鉄は、タンパク質から脳の神経伝達物質を分解、合成するために必要な補酵素です。この補酵素が足りなくなると、神経伝達物質は合成することが出来ません。
もう一度表を見てみましょう。「Ca」はカルシウム、「Fe」は鉄です。タンパク質からアミノ酸に分解するときや、L-フェニルアラニン、L-トリプトファンからドーパミンやセロトニンを合成するときに鉄が使われているのが分かります。
他にも、カフェインの代謝にはビタミンB群が大量に使われてしまいます。ビタミンB群とは、ビタミンB2やビタミンB6などのビタミン群と、葉酸やナイアシンを総称したものです。
これらビタミンB群も脳の神経伝達物質を合成する際に必要な補酵素です。
コーヒーを飲むことによってこれらの補酵素が不足してしまうと、脳の神経伝達物質が合成出来なくなり、うつ症状を引き起こしてしまうのです。
この他、カフェインによって睡眠の質や量が低下してしまうと、うつ症状を引き起こす恐れがあります。
ですので、分子整合栄養医学の観点からみると、コーヒーは「うつ症状を引き起こすか悪化させてしまう可能性がある飲み物」として分類することが出来るのです。
コーヒーはうつ症状改善に効果がある?それとも無いの?まとめ!
以上が、コーヒーがうつ症状の改善に効果があるのか?それもと無いのかでした。
ここまでの流れをまとめると・・・
- コーヒーに含まれるカフェインがうつ症状の改善に効果がある研究結果がある
- 逆に、カフェインの覚醒作用によって気分が落ち込む場合がある
- カフェインやタンニンは、鉄やカルシウムの吸収を阻害する
- 鉄やカルシウムは脳の神経伝達物質の補酵素
- 神経伝達物質の補酵素が足りなくなると、神経伝達物質の分泌が低下してしまう
という感じになります。
つまり、コーヒーがうつに効果があると言える場合は、鉄やカルシウムなどのミネラルとビタミンを十二分に摂取し、かつタンパク質も十分に摂取している場合に限られるという事になります。
これ以外の場合は、コーヒーを飲むことによって骨粗しょう症のリスクやうつ症状、鉄欠乏性貧血など、様々なリスクが発生する原因となります。
カフェインは集中力向上や、やる気の向上など良い面もありますが、これは十分な栄養が整っている場合に限ります。うつ症状などがあって普段の食生活が乱れている場合は、コーヒーの摂取は控えることがオススメです。
もし、コーヒーを飲みたい場合は、サプリなどで十分に栄養補給をするようにしましょう。どのサプリを飲んだら良いのかについては、うつ病の改善には何のサプリメント飲むといい? 分子栄養医学の観点からオススメのサプリを紹介!で詳しく解説していますので参考にしてみて下さい。