バナナがうつ症状の改善に効果的と書かれているのを見たり、誰かから聞いたことがありませんか?
もしかしたら、あなたもこれを信じて毎日バナナを食べているかもしれません。
しかし、バナナを食べていてもうつ症状の改善を感じたことがある人はほぼ居ないのではないでしょうか。
なぜ、うつに効果があると言われているバナナを食べていても効果を感じないのか、その理由と原因を詳しく解説します。
目次
バナナがうつに効果があるって本当?
ネット上には、バナナを食べるとうつにいい、と書かれている記事をよく見ますが、実際の所本当なのでしょうか。
記事に書かれている内容をみると、バナナにはセロトニンの材料となる「トリプトファン」が含まれており、トリプトファンを摂取することでセロトニンの分泌を促す、というものです。
もし本当なら、バナナを食べればうつ症状が改善していくはずですよね。
結論から先に言ってしまうと、バナナを食べただけではうつは改善しにくいと言えます。その理由としては、バナナに含まれる栄養素が少なすぎるからです。
バナナに含まれる栄養素
バナナ可食部100g当たりのエネルギー(100gの目安:中くらいのバナナ1本分)
- タンパク質 1.1g
- カリウム 360mg
- マグネシウム 32mg
- ビタミンB1 0.05mg
- ビタミンB2 0.04mg
- ナイアシン(ビタミンB3) 0.7mg
- ビタミンB6 0.38mg
- 葉酸(ビタミンB9) 26㎍
- 食物繊維 1.1g
- ポリフェノール 1.1g
- トリプトファン(セロトニンの材料) 10mg
バナナは、ビタミンBや食物繊維、炭水化物など、バランス良く栄養を含んでいますが、その量は微々たるものです。
ビタミンB1やビタミンB2を見てみると、その量は0.05mg前後とごく僅かしか含まれていないのが分かります。
2015年版食事摂取基準を見てみると、ビタミンB1の一日の推奨量は、女性では18~49歳で1.1mg、男性では18~49歳で1.4mgとなっています。
バナナ一本当たり0.05mgだとすると、一日当たり20本〜30本ほど食べないと推奨量には届かない計算になります。
さらに言うと、うつの改善に良いと言われているトリプトファンは、わずか10mgしか含まれていません。このトリプトファンの摂取量目安は、体重1kgあたり2mg程度、体重が60kgの方の場合は120mgと言われています。
バナナで推奨量を摂取しようとすると、約12本も毎日食べなくてはならない計算になります。こんな大量のバナナを毎日食べ続けるのは、不可能に近いですよね。
実は、バナナを大量に食べなくても、ビタミンB群やトリプトファンは、他の食品の方がもっと多く含まれているのです。
他の食品には、どのくらいのトリプトファンが含まれているのか、含有量が多い食べ物を見てみましょう。
トリプトファン含有量が多い食べ物(可食部100gあたり)
白米 | 82mg |
玄米 | 94mg |
パスタ(乾麺) | 140mg |
そば(乾麺) | 170mg |
鮭 | 250mg |
カツオ | 310mg |
マグロ赤身 | 270mg |
豚ロース | 280mg |
鶏むね肉 | 270mg |
木綿豆腐 | 98mg |
豆乳 | 53mg |
私達が日常的に食べている白米や豆腐、パスタやそばにも、トリプトファンは多く含まれています。特に多いのが、魚や肉などの動物性タンパク質です。
表では、どれも200mgを超えており、多いものでは300mg以上含まれています。
これに比べると、バナナに含まれている10mg程度のトリプトファンを摂取したところで、効果が望めないのは明らかでしょう。
バナナを大量に食べたところで、うつ症状の改善に必要な量の栄養を摂取することは出来ないのです。
トリプトファンだけ摂取してもうつ症状は改善しない
上述したように、トリプトファンは日常食べているものに多く含まれています。ですので、基本的にトリプトファンが不足することはありません。
バナナだけが異常に取り上げられていますが、バナナを食べなくても十分な量のトリプトファンを摂取しているのです。
それでは、なぜトリプトファンを日常的に摂取しているにも関わらず、うつ症状が発症してしまうのでしょうか。
それは、うつの原因はセロトニンだけではないからです。
脳の神経伝達物質は、興奮系のドーパミン、抑制系のGABAがあります。この2つのバランスを調節しているのがセロトニンです。
シーソーで例えると下図のように、支点の役割を担っています。
うつ症状を発症している方は、セロトニンだけでなく、ドーパミンやGABAの分泌量も減っています。ですので、セロトニンだけを補っても、肝心のシーソーのバランスが整いません。
うつ症状を改善するには、これらの神経伝達物質の材料となる栄養素をまんべんなく摂取することが重要です。
では、何を摂取すればこれらの神経伝達物質をバランス良く分泌させることが出来るのでしょうか。その答えが「タンパク質」です。神経伝達物質は、タンパク質を材料に作られているのです。
下図は、タンパク質が脳の神経伝達物質に分解、合成されるまでの過程を表したものです。
タンパク質を摂取すると、いくつかの工程を経てアミノ酸に分解されます。脳神経伝達物質で重要なのは、「L-グルタミン」「L-フェニルアラニン」「L-トリプトファン」と呼ばれるアミノ酸です。
このアミノ酸は、ビタミンやミネラルを元に、神経伝達物質である「ドーパミン」や「セロトニン」、「GABA」に合成され、消費されていきます。
この合成の時には、補酵素としてビタミンやミネラル等が必要になります。
例えば、L-トリプトファンから5-HTPに合成する時には、葉酸、鉄、ナイアシンが必要になります。先ほどのバナナに含まれている栄養素を見てみると、バナナには鉄分が入っていません。
鉄分が足りなければ、バナナを食べたところでトリプトファンがセロトニンに合成されることはなく、そのまま体外に排泄されてしまいます。
このように、特定の栄養だけを摂取しても、他の栄養素が足りなければ脳の神経伝達物質を合成することが出来ないのです。
冬期うつにも、バナナは効果無し
うつ病の1つに、冬期うつなどの季節性情動障害があります。これは、日照時間が少なくなる冬にうつ症状が増えてくることから、こう呼ばれています。
ネット上の一部の記事には、冬期うつの改善にはバナナを食べて日光浴をするとトリプトファンからセロトニンに合成が促されるという事が書かれています。
しかし、冬期うつの本当の原因は、ビタミンDの不足によるものです。バナナにはビタミンDが含まれていないので、冬期うつの改善には効果を期待できません。
ビタミンDは、紫外線を浴びることで体内で合成することが出来る栄養素です。しかし、冬は紫外線が強くないために、皮膚でビタミンDを合成できなくなります。日焼けサロンなどで紫外線を浴びるとうつ症状が治る人たちがいることが分かったため、冬期うつとビタミンDの関連が報告されるようになりました。
ビタミンDは、魚の内臓に多く含まれているので、サンマやイワシ、シシャモ、しらすなどを内臓ごと食べるのがオススメです。それでも必要量を補うのは難しいので、サプリメントで確実に補うのがオススメです。
うつの改善には、バナナよりもタンパク質とビタミンB群の補給を!
バナナには、脳の神経伝達物質の材料となるタンパク質や、冬期うつの改善に効果的なビタミンDがほとんど含まれていないことがお分かり頂けたかと思います。
うつを発症している状態は、これらの栄養素が体内で枯渇している「質的な栄養失調」の状態です。
質的な栄養失調とは、毎日お腹いっぱい食べているのに、体に必要な栄養素を十分に摂取出来ていない栄養失調のことを言います。
バナナを3本くらい食べればお腹いっぱいになると思いますが、バナナ三本程度では、十分な栄養を摂取することが出来ません。
バナナは確かに、バランス良く栄養素を補給できる優秀な食べ物ですが、分子整合栄養医学の観点から見ると、うつ症状の改善のためにバナナを主に食べることはオススメしません。
バナナを食べるよりも、赤身の肉や卵、レバーを食べる方がよりビタミンB群や鉄分、タンパク質を摂取することが出来るので、こちらの方がうつ症状の改善にはオススメです。
バナナはうつに効果無し! バナナとうつの関係を分子整合栄養医学の観点から徹底解説!まとめ
以上が、バナナがうつ症状の改善に与える効果でした。
ここまでの流れをまとめると・・・
- バナナにはビタミンB群やトリプトファンが含まれているが、その量はごく僅か
- バナナの栄養量でうつ症状を改善するのは難しい
- 冬期うつの原因はビタミンD不足。バナナにはビタミンDが含まれていない。
- バナナよりも栄養が含まれているレバーや魚を内臓ごと食べるのがオススメ
という感じになります。
ネット上では、バナナがうつに効果的であるという記事をよく見かけますが、分子整合栄養医学の観点からみると、ほとんど効果が無いことが分かって頂けたかと思います。
うつ病の原因は、セロトニンの不足だけではありません。タンパク質やビタミン、ミネラルなど、様々な栄養が不足している「質的な栄養失調」が原因です。
質的な栄養失調を改善するには、食品から摂取する栄養素では到底改善することが出来ません。サプリなどで補うことが必要になります。
とは言っても、必要な栄養素の量は、その人の生活習慣や消費される栄養素の違いから、人それぞれ摂取する最適な量が異なります。
何のサプリをどのくらい飲めば良いのかについては、うつぬきコンサルティングでアドバイスをしていますので、気になる方はご利用下さい。