夜、布団に入っても眠れない、眠ったと思ったらすぐに目が覚めてしまう、睡眠薬を飲んでいるのに眠れなくなったなど、不眠で悩む方は多いと思います。
特に、うつで苦しんでいる方は、このような症状が多いのでは無いでしょうか? 人間関係やお金のこと、将来のことが不安でなかなか寝付けませんよね。中には、数種類の睡眠薬を組み合わせてもなお、眠れないという方もいます。
このような症状に食べ物や食事が有効であれば、ぜひ試してみたいと思いますよね。
食事を変えてもっと眠れるようになりたい、体のために今飲んでいる睡眠薬を減らしたい、睡眠薬を飲まなくても眠れるようになる食事は何かなど、睡眠薬の置き換えとして眠れるようになる食事を探しているのであれば、今回の記事は非常に役に立つと思います。
今回は、うつと不眠の関係、一般的に睡眠に効果があると言われている食事、分子整合栄養医学の観点からうつと不眠を治す栄養を詳しく解説します。
目次
うつと不眠の関係
やる気が起きない、ダルい、動きたくない、気分が落ち込む・・・、このような意欲低下がうつ病の特徴ですが、同時に不眠症を抱えている方も珍しくありません。
気分が落ち込むだけならまだしも、なぜ眠れなくなってしまうのでしょうか?
この原因は、うつ病の原因とされている「セロトニン」の分泌不足にあります。食事について解説する前に、まずはうつと不眠の関係を解説しておきます。
セロトニンとは、脳の神経伝達物質の1つで、感情や精神面、睡眠など人間の大切な機能に深く関係しています。セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、分泌されるとリラックスしたり幸せを感じたりする事から、メンタルに良いとされ、近年注目を集めています。
このセロトニンから合成される「メラトニン」という神経伝達物質は、入眠や安眠などの睡眠の質とも深く関わっており、セロトニンの不足はメラトニンの不足にも繋がります。
不眠はうつ症状と深い関係があり、メラトニンが不足すると不眠などの症状が現れることから、うつとセロトニンは深い関係があるといわれています。
うつ症状がある人は、この「セロトニン」の分泌量が減ってしまっているため、睡眠に必要な「メラトニン」が生成されず、夜になっても眠くならなかったり、寝付きが悪かったりと、不眠の症状も同時に発症してしまうのです。
上図はセロトニンとメラトニンの関係を表したものです。
セロトニンの材料である「トリプトファン」と呼ばれるアミノ酸から「セロトニン」に合成され、「セロトニン」から「メラトニン」に合成されます。つまり、うつ症状で「セロトニン」の合成量が滞ってしまうと、同じく「メラトニン」の合成量も減ってしまうのです。
そして、うつと不眠、セロトニンとメラトニンについて解説するときは、同時に体内時計に関しても解説しなければなりません。それは、これらの分泌が体内時計を管理しており、切っても切り離せない関係だからです。
体内時計の仕組みは、日中はセロトニンが活発に分泌され、逆にメラトニンの分泌が抑制されることで、活発に活動できるようになっています。
夜間はメラトニンが活発に分泌され、逆にセロトニンの分泌が抑制されることで、眠気を感じて休むことが出来るのです。
http://littlescientist.jp/spanist_blog/キレイと健康%E3%80%80第17回【セロトニンと、メラトニン/
これらセロトニンやメラトニンは、目から入る光の刺激や朝食などの生活習慣によって分泌量が変わります。
メラトニンの合成量が減ってしまうことで、体内時計が正常に働かなくなってしまい、夜になっても眠れなかったり、昼間に眠くなってしまったりと、様々な不調が現れてしまうのです。
では、このセロトニンやメラトニンを食事などで直接補給すれば、うつ症状や不眠が改善するのでしょうか?
実は、そんな単純なものではありません。実は、食事でこれらの栄養を摂取したからと言って、それが脳で使われるとは限らないからです。
トリプトファンを摂れば眠れるようになる?
よく、「うつの人はトリプトファンが多く含まれている食べ物がいい」と言われていますよね。トリプトファンとは、脳の神経伝達物質であるセロトニンやメラトニンの材料となる栄養素です。
うつ症状がある人は、このセロトニンの分泌量が減っていて、これが原因でうつ症状が発症していると言われています。
ですので、トリプトファンが多い食べ物を食べれば、体の中でセロトニンに変換され、うつ症状に効果があると言われているのです。また、セロトニンの合成量が増えることでメラトニンの合成量も増え、不眠や過眠などの改善も期待できます。
このトリプトファンを食事で摂取したら、セロトニンやメラトニンの合成量が増えて、うつや不眠が改善するのでしょうか?
結論から言ってしまうと、食事などでトリプトファンを摂取しただけではうつ症状や不眠がよくなることはありません。
トリプトファンだけ摂取してもうつ症状や不眠は改善しない
トリプトファンは特別な食べ物にしか含まれていないような感じがしますが、実際は私達が普段食べているものに多く含まれています。
ですので、基本的にトリプトファンが不足することはありません。
実際に普段食べているものにどのくらいのトリプトファンが含まれているのかは、以下の表にまとめました。
トリプトファン含有量が多い食べ物(可食部100gあたり)
白米 | 82mg |
玄米 | 94mg |
パスタ(乾麺) | 140mg |
そば(乾麺) | 170mg |
鮭 | 250mg |
カツオ | 310mg |
マグロ赤身 | 270mg |
豚ロース | 280mg |
鶏むね肉 | 270mg |
木綿豆腐 | 98mg |
豆乳 | 53mg |
バナナ | 15mg |
牛乳 | 82mg |
ピーナッツ | 27mg |
ヨーグルト | 42mg |
表を見ると、バナナ、牛乳、ピーナッツ、ヨーグルトなど、私達が日常的に食べているものにも多く含まれていることが分かります。さらに、これらよりも白米や豆腐、パスタやそばのほうが、トリプトファンは多く含まれていますね。
特に多いのが、魚や肉などの動物性タンパク質です。表では、どれも200mgを超えており、多いものでは300mg以上含まれています。
生活する上で必要なトリプトファンの一般的な摂取量の目安は、体重1kg当たり2mg程度と言われています。これは、体重が50kgの場合はおよそ100mg程度にあたります。
上の表は可食部100g当たりのトリプトファンの量ですから、普通に考えて一日に100g以上は余裕で食べていますよね。つまり、パスタやそば、白米などを200g程度食べれば、一日に必要なトリプトファンは十分に摂取出来ているのです。
それでは、なぜトリプトファンを日常的に摂取しているにも関わらず、うつ症状や不眠が発症してしまうのでしょうか?
それは、うつの原因はセロトニンやメラトニンだけではないからです。
脳の神経伝達物質は、興奮系のドーパミン、抑制系のGABAがあります。この2つのバランスを調節しているのがセロトニンです。
シーソーで例えると下図のように、支点の役割を担っています。
うつ症状を発症している方は、セロトニンだけでなく、ドーパミンやGABAの分泌量も減っています。ですので、セロトニンだけを補っても、肝心のシーソーのバランスが整いません。
うつ症状を改善するには、これらの神経伝達物質の材料となる栄養素をまんべんなく摂取することが重要です。
この神経伝達物質の材料となるのが、牛肉などの「タンパク質」なのです。なぜ、タンパク質と脳の神経伝達物質が関係あるのでしょうか。
それは、肉を摂取すると、胃酸などで分解されてアミノ酸になり、このアミノ酸が脳の神経伝達物質の材料になるからです。
うつ、不眠にはタンパク質が鍵!
まず理解して欲しいのは、脳の神経伝達物質は「タンパク質から作られる」ということです。
下図は、タンパク質が分解されてアミノ酸になるまでと、アミノ酸から脳の神経伝達物質に合成されるまでの過程を表したものです。
まず、タンパク質を摂取すると体内で何種類ものアミノ酸に分解されます。
この中でも、脳神経伝達物質で重要なのは、「L-グルタミン」「L-フェニルアラニン」「L-トリプトファン」と呼ばれるアミノ酸です。
このアミノ酸は、ビタミンやミネラルを元に、神経伝達物質である「ドーパミン」や「セロトニン」、「GABA」に合成され、消費されていきます。
表では、下に向かっていくごとにアミノ酸から様々な神経伝達物質に合成されています。項目の間に書かれているものが、合成に必要な栄養素です。
表の中で特に注目して欲しいのが、表右にあるL-トリプトファンから5−HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)、メラトニンに合成するまでの過程です。
L-トリプトファンからメラトニンに合成するためには、まず5-HTPに合成しなくてはなりません。この時に必要な栄養素は、L-トリプトファンに加えて葉酸、鉄、ナイアシンが必要になります。
また、5-HTPからセロトニンに合成するためにはビタミンB6が必要ですし、セロトニンからメラトニンに合成するためには、SAMe(サムイー)とマグネシウムが欠かせません。
他にも、睡眠の質を向上したり、リラックスする作用があるGABAの合成には、L-グルタミンに加え、ナイアシンやビタミンB6等が必要になります。
L-グルタミンから合成される「L-グルタミン酸」は興奮系の神経伝達物質として働きますが、分泌量が多くなるとビタミンB6等を利用して抑制系のGABAへと変換されます。
こうやって自律神経が調節され、良い睡眠へと導かれるはずなのですが、ビタミンB6が足りないと上手く変換できなくなり、GABAが不足してしまいます。これが自律神経が乱れる原因となり、しいてはうつ症状や不眠症状がおこるのです。
このように、脳の神経伝達物質を合成するためには、その材料となるアミノ酸に加えて、様々なビタミンやミネラルが必要となります。
セロトニンやメラトニンだけにこだわらず、全ての神経伝達物質を正常に分泌出来るよう、十分なタンパク質の摂取と、ビタミン、ミネラルを摂取しましょう。
うつと不眠を改善する食事、食べ物とは
不眠には、トリプトファン単品よりもタンパク質やビタミン、ミネラルが重要である事が分かったところで、具体的にどんな食事や食べ物を食べれば良いのでしょうか。
うつぬきやがオススメする、不眠に効果的な食事を解説します。
ステーキ、刺身
不眠の解消として最もオススメなのが、ステーキや刺身です。その中でも、「赤身の肉」を選ぶようにしましょう。
例えば、牛のモモ肉などの赤身には、タンパク質やビタミン、鉄分や正常な細胞を作るために必要な亜鉛やビタミンB12を大量に含んでいます。
また、カツオやマグロなどの赤身の魚にも、タンパク質に加えて鉄分を多く含んでいます。
鉄分は、トリプトファンからセロトニンに合成する際に絶対に必要になるため、積極的に摂取して頂きたい栄養素の1つです。
しかも、赤身に含まれている鉄分は、「ヘム鉄」といわれ、吸収されやすい鉄分になります。ですので、鉄分補給にはホウレン草などの植物からよりも、動物性の肉から摂る方が効果的です。
赤身のステーキを食べるときは、なるべく「血のしたたるレア」で食べるようにしましょう。肉汁にも栄養がたっぷり含まれており、加熱しすぎるとせっかくの栄養が流れ出てしまいます。
赤身の魚も同様で、生で食べる刺身が一番栄養を無駄なく摂取することが出来ます。
例外として、豚肉にも赤身がありますが、豚肉の場合はよく焼いて食べるようにして下さい。
レバニラ炒め、レバー串
赤身の肉に加えて、是非とも食べて頂きたいのがレバーです。赤身の肉だけでは葉酸やナイアシン、ビタミンB6などのビタミンB群が足りないですが、「レバー」を一緒に食べることでバランスが整います。
葉酸やナイアシン、ビタミンB6は、脳の神経伝達物質を合成する際に必ず必要になる栄養素のため、食事から不眠やうつを治そうとする際は、必ず食べて頂きたい食べ物です。
レバーは味にクセがあるため、好き嫌いがハッキリと分かれる食べ物です。レバニラ炒めや焼き鳥のレバー串などは濃い味付けがされているので、レバーが嫌いな人でも食べられるかもしれません。
中華料理や居酒屋に行った際は、レバーを必ず一品加えて、栄養のバランスを取るようにしましょう。
キムチ
キムチには、睡眠の質を向上してくれるといわれるGABAが多く含まれています。
GABAは、脳の神経伝達物質の一種ですが、食品やサプリメントから摂取しても、血液脳関門と呼ばれるバリア機能によって、脳には直接影響を及ぼすことはありません。
しかし、GABAを摂取する事で睡眠の質やストレス耐性が上がったことから、脳ではなく腸に作用しているのではといわれています。
まだまだ解明されていないことが多いですが、害になる事は無いので積極的に摂取していきましょう。
摂取方法としては、夕食に50グラムほどを食べるのがオススメです。
カキ鍋
牡蠣には亜鉛が多く含まれていることで有名ですが、この亜鉛も脳の神経伝達物質の分泌に欠かせない栄養素の1つです。
最近の研究結果では、興奮系の神経伝達物質であるグルタミン酸と、抑制系の神経伝達物質であるGABAの正常な分泌に亜鉛が関係していることが分かってきました。
亜鉛が不足することにより、適切に抑制系のGABAの分泌が出来なくなり、興奮系のグルタミン酸の濃度が高まりすぎてしまって、不眠やパニック症状が引き起こされます。
ですので、うつやパニック、不眠を治したいときは、タンパク質に加えて、鉄や亜鉛などのミネラルや、ビタミンなどの補酵素もまんべんなく摂取するようにしましょう。
牡蠣の食べ方としては、生牡蠣や牡蠣フライなどがありますが、特にオススメしたいのが牡蠣鍋です。
鍋には、野菜や肉などを煮るだけで食べられるので、うつやパニックがある人でも料理の負担がありません。
鍋つゆには様々な種類が販売されており、チゲ鍋からカレー鍋、ちゃんこ鍋など好みの味に出来るのも利点です。キノコや豆腐、白菜など様々な食材を色々煮て食べてみて下さい。
海藻サラダ
不眠にはメラトニンやGABAなど、脳の神経伝達物質以外にも、マグネシウムなどのミネラルが深く関係しています。
マグネシウムは、セロトニンからメラトニンに合成するために必要になりますが、それだけではありません。
マグネシウムを摂取すると、気持ちを落ち着かせてくれたり、体温を下げて眠りにつきやすくなる作用があると言われています。
このような、睡眠の質に重要なミネラルが多く含まれているのが、アオサや海苔、ワカメや昆布などの海藻類です。
海藻にはビタミンやミネラル以外にも、お腹の調子を整えてくれる食物繊維も多く含まれています。便秘や下痢など、お腹の調子が悪くても寝付きが悪くなりますので、肉料理を食べる際は必ず海藻サラダなども食べるようにしましょう。
スライス玉ねぎ、にんにく
スライス玉ねぎやスライスにんにくなども、入眠には効果的です。
玉ねぎやにんにくに限らず、らっきょうやネギなど、切ったときに「ツーン」として涙が出る食べ物には、「硫化アリル」という成分が含まれています。
この硫化アリルには、気分や神経を落ち着かせ、眠りにつきやすくする作用があります。
硫化アリルは、におい成分に入眠効果があるので、食べるのはもちろん、においだけでも効果があります。枕元にスライス玉ねぎを置いておけば、食べなくても入眠効果を期待することが出来るのです。
1つ注意したい点は、スライスした玉ねぎやニンニクなどは、水にさらさないことです。
硫化アリルは水溶性のため、水にさらすと水に溶け出てしまいます。せっかく睡眠の質を上げるために硫化アリルを利用するのに、水と一緒に捨ててしまったら意味が無いですよね。
ですので、これらを食べる時や利用するときは、水にさらさないようにしましょう。
不眠の原因を解消するのも重要!
うつ症状からくる不眠の改善のために食事を変える場合は、不眠の原因となっている事を極力なくしていくことが重要です。
この原因をそのままにしておくと、「対症療法 vs 対症療法」となり、終わりの見えない不眠症の泥沼にハマりかねません。
例えば、夜に交感神経を刺激する精神薬を飲んでいた場合、当然ですが眠りにつくことが出来ません。にもかかわらず、食事に含まれる成分で無理矢理眠ろうとすると、「眠れなくなる成分 vs 眠くなる成分」の戦いとなります。
自律神経とは?
自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」の2種類があります。
この二つはシーソーのように片方が高くなると片方が低くなるようになっています。どちらかに傾きすぎず、両方のバランスが取れているときが最も健康な状態です。
交感神経が優位になると、イライラや不眠、心拍数や血圧が上がるなど緊張状態になります。
逆に、副交感神経が優位になると、だるさや無気力になるなどの不調が現れます。
話を元に戻すと、脳内ではこの2つの成分が戦っているので、スヤッと眠ったと思ったらパチッと目が覚めるなど、不安定な状態となります。
最終的には、「どちらか作用が強い方が勝つ」ので、精神薬など作用が強い方に軍配が上がります。そして、これらの成分は飲み続けていくと段々効かなくなってくるので、次第に量が増えてしまいます。
このような原因をそのままにして無理矢理眠るのは、いたちごっことなって更に酷い不眠症に発展しかねません。
まずは、不眠となっている原因を極力なくしていくことが重要です。そのためには、以下の事に気をつけるか、習慣になっている場合は改善するなどして対策をしましょう。
寝る前の糖質は控える
眠る前に甘い物や炭水化物を摂取すると、血糖値をコントロールするホルモンが分泌されて眠れなくなる可能性があります。
糖質とは、砂糖や果糖以外にも、白米やパン、うどんなどの精製された小麦製品も含まれます。
これらの糖質を摂取すると、血糖値を下げるインスリンというホルモンを大量に分泌させます。
インスリンが多量に分泌されると、血糖値が正常異常に下がってしまい、低血糖になります。低血糖は生命に関わるので、防御反応として血糖をあげるホルモン(グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール)が分泌されます。
血糖値を上げるホルモンは、交感神経を高める働きをするので、イライラしたり緊張したり、眠れなくなる作用があります。
このような理由から、寝る前に甘い物や炭水化物を食べると寝付きが悪くなったり眠れなくなる原因となります。
さらに、インスリンや血糖値を上げるホルモンの合成には、原料としてアミノ酸、ビタミンB群、亜鉛、マグネシウム、コレステロールなどが必要になります。
糖質をたくさん摂ると、これらのホルモンを大量に合成しなくてはならなくなり、ビタミンB群やミネラルがどんどん使われてしまいます。
ビタミンB群やミネラルが不足すると、摂取したタンパク質から神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、GABA)への合成が滞ってしまいます。
これらの神経伝達物質が不足してしまうことで、うつ症状が現れたり、不眠になってしまいます。
ですので、夕方5時以降は甘い物や炭水化物などの糖質は控えるようにするのが望ましいと言えます。
午後以降はカフェインの摂取を控える
カフェインといえば「コーヒー」ですが、コーヒー以外にもカフェインが含まれているものは沢山あります。
緑茶や紅茶、ウーロン茶、エナジードリンク、特定のビタミン剤などには大量のカフェインが含まれています。このカフェインを摂取すると、覚醒作用があるので眠れなくなります。
眠れなくなるにも関わらず、「うつにはコーヒーが良い」という情報がネットに出回っており、これを信じて何杯もコーヒーを飲んでいる方が多いのです。
具体的には以下のような記事です。
米国人女性5万人を10年間、追跡調査した研究で、コーヒーを1日4杯以上飲む女性では、うつの割合が20%減少するとの結果が示された。
10年間の追跡期間中、2,607人がうつを発症した。コーヒーの摂取が週に1杯以下の女性に比べ、うつ発症リスクは、1日2~3杯グループで15%減、1日4杯以上グループで20%減と低下していった。カフェイン抜きのコーヒーやお茶、清涼飲料、チョコレート飲料を飲む女性では、抑うつの発症リスクとの関連はみられなかった。
調査を開始した当初にうつ傾向ではなかった女性が、その後のコーヒーによるカフェイン摂取量増加によって、うつの発症を低減されていたが、Lucas氏らはそのことが直接に、カフェインがうつリスク低減に有効であるということを意味するものではないと指摘している。
そのうえで、カフェインが保護作用をもっている可能性が示唆されており、コーヒーの摂取によるうつの低下を示した過去の研究結果と一致していると結んでいる。
http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2011/001873.php
このように、コーヒーに含まれているカフェインがうつ病の予防や改善に効果があるとされており、その理由はカフェインの保護作用でないかと言われています。
カフェインの保護作用がうつ症状とどのような関係があるのかについてまだ詳しく分かっていませんが、以下のような保護作用があるようです。
カフェインはアデノシンA2a受容体拮抗薬なので、ドパミン神経をアデノシンから保護してくれます。珈琲は多量のカフェインを含んでいるので、パーキンソン病の予防になると考えられて、カリフォルニア州サンノゼのカイザーパーマネンテ病院で、珈琲による治験が進行中とのことです。結果はまだ出ておりません。
カフェインは神経細胞以外の細胞も保護してくれます。事前にカフェインを投与したマウスは、肝臓毒リポポリサッカライド(LPS)を注射しても死ぬことはなく、肝細胞の逸脱酵素(GOTとGPT)が高値を示すこともありません。珈琲と肝機能の関係を調べた疫学調査結果とも一致しています。
http://www.vividlady.com/IANA/save/coffee.html
つまり、コーヒーのカフェインがうつに良いと言うよりは、「カフェイン」が何らかの保護作用をしてうつ症状が改善しているのではないかと考えられています。
これを見て「カフェイン=うつにいい」と思うのは間違いで、カフェインはうつの天敵にもなります。それは、以下のような理由があるからです。
・うつ病はアドレナリンやセロトニンなどの脳内神経伝達物質の異常で起こる。コーヒーに含まれるカフェインは適量であれば問題はないのが、過剰に摂取してしまうと交感神経を刺激することによって鬱を悪化させる可能性がある。
・コーヒーの飲み過ぎでカフェイン依存症になると、理由もなく不安になったり、落ち込んだりする可能性があるという。これが「軽うつ」の症状とよく似ている。
・カフェインを摂取すると脳内神経系で興奮を引き起こす「アドレナリン」が分泌される。カフェインの摂取過多によっては、アドレナリンが出すぎて、不眠症状やイラつきとかの症状が出やすくなる。
・抗うつ剤は精神を落ち着ける脳内物質「セロトニン」の働きを助ける。対してコーヒーはアドレナリンの働きが活発化する。抗うつ剤とコーヒーの効果は相反するので、同時の摂取は控えた方がいい。
このような意見は、分子整合栄養医学でも同じ事が言われています。カフェインの覚醒作用が神経伝達物質のバランスを崩し、イライラや不安感、不眠などの心身の不調に繋がってしまうのです。
ですので、うつ症状がある人はコーヒー、紅茶、緑茶などのカフェイン入りの飲料は避けた方がいいと言えるでしょう。
もし飲みたいのであれば、朝食に一杯飲む程度にし、午後はデカフェ(カフェインレス)にするなど、カフェインを摂取することは控えるようにしましょう。
精神薬を見直す
不眠の原因として意外と見落とされがちなのが、精神薬です。
精神薬には、やる気を出すためにドーパミンやノルアドレナリンの濃度を上げる作用の抗うつ剤があります。
これらは「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」や「非定型抗精神病薬」と呼ばれており、有名な物としては「ミルナシプラン(トレドミン)」や「デュロキセチン(サインバルタ)」「エビリファイ(レキサルティ)」などがあります。
これらの薬は、交感神経を優位にするドーパミンやノルアドレナリンの濃度を高める働きをするため、夕方以降に服用すると眠れなくなる可能性があります。
また、薬の副作用に不眠がある場合があります。
この場合は、薬の名前をネットで調べると、Wikipediaなどに薬の副作用として「不眠」などと書かれていますので、一度調べて見ると良いでしょう。
このような精神薬の作用による不眠の場合は、薬の調節が必要になります。主治医と相談して、薬の調節をして貰いましょう。
うつと不眠を改善する食事はある? まとめ
以上が、うつと不眠の関係性と、一般的に不眠に効くと言われている食事、分子整合栄養医学の観点からオススメの栄養素の解説でした。
ここまでの流れをまとめると・・・
- 不眠の原因はセロトニンとメラトニンの分泌不足
- セロトニンの分泌が減るとメラトニンも分泌が減る
- セロトニンとメラトニンは体内時計を司っている
- タンパク質、ビタミン、ミネラルで脳の神経伝達物質を作り出せるようになる事が重要
- 不眠の改善にお勧めの食事は、赤身の肉やカキ、海藻、キムチ、玉ねぎ
- 不眠を治すには、先に原因を無くすことが重要
- 糖質、カフェインの摂取を控え、精神薬を見直す
という感じです。
基本的には、牛肉や刺身、レバーや海藻サラダなどを多く食べて、タンパク質とビタミン、ミネラルを摂取しつつ眠りを調節していくという感じですね。
当たり前のことですが、タンパク質とビタミン、ミネラルを補給したからといってすぐに眠れるようになるわけではありません。体質改善には時間がかかります。
その間は、主治医と相談の上、睡眠薬や睡眠導入剤で眠りを確保していくことは必要でしょう。不安感やイライラが酷いようであれば、抗うつ剤や安定剤などの精神薬も用いる必要があります。
薬はあまり飲みたくないと思いますが、必要に応じて対症療法を組み合わせることは重要です。酷い不眠の場合は、対症療法をしつつ栄養補給を行っていきましょう。
体質改善の方法や、うつを克服する詳しい方法は、下記の「うつぬき完全攻略マニュアル」にまとめてあります。
今なら無料でプレゼントしていますので、是非参考にしてみて下さい。