牛乳を飲むとうつ症状が改善する、という記事を見たことがありませんか? または、イライラや興奮が静まって安眠効果が得られるなどと書かれている事もあります。
かたや、「牛乳は体に悪い」と書かれている記事もあり、どちらが本当の情報か分かりづらいですよね。
今回は、分子整合栄養医学の観点から、牛乳がうつ症状にどのような栄養を与えるのか? を詳しく解説します。
目次
牛乳を飲んでもうつ症状は改善しない! 逆に悪化する恐れも・・・
牛乳がうつに良いとされている理由として、脳の神経伝達物質であるセロトニンの材料、トリプトファンが多く含まれていることが言われています。
うつ症状はセロトニンの分泌不足が原因と言われており、この分泌量を改善すればうつ症状がよくなると考えられています。
このセロトニンの材料となるのが、トリプトファンなのです。
そして、牛乳に含まれているトリプトファンの量は、100gあたり42mgほど含まれており、これがうつ症状に良いと言われているゆえんです。
しかし、牛乳に含まれているトリプトファンの量は、他の食品に比べて決して多いとは言えません。
トリプトファン含有量が多い食べ物(可食部100gあたり)
白米 | 82mg |
玄米 | 94mg |
パスタ(乾麺) | 140mg |
そば(乾麺) | 170mg |
鮭 | 250mg |
カツオ | 310mg |
マグロ赤身 | 270mg |
豚ロース | 280mg |
鶏むね肉 | 270mg |
木綿豆腐 | 98mg |
豆乳 | 53mg |
私達が日常的に食べている白米や豆腐、パスタやそばにも、トリプトファンは多く含まれています。特に多いのが、魚や肉などの動物性タンパク質です。
表では、どれも200mgを超えており、多いものでは300mg以上含まれています。
牛乳は、100gあたり42mgしかトリプトファンが含まれていないので、白米を茶碗一杯食べるよりも摂取出来る量が少ないと言えるでしょう。
ですので、牛乳を飲まなくても、パスタやそば、白米など、日常的に食べるものでトリプトファンは十分に摂取出来ているのです。
そして、トリプトファンがうつにいいと言われていますが、実はトリプトファンだけを摂取しても意味が無いのです。
トリプトファンだけ摂取してもうつ症状は改善しない
上述したように、トリプトファンは日常食べているものに多く含まれています。ですので、基本的にトリプトファンが不足することはありません。
牛乳だけが異常に取り上げられていますが、牛乳を飲まなくても十分な量のトリプトファンを摂取しているのです。
それでは、なぜトリプトファンを日常的に摂取しているにも関わらず、うつ症状が発症してしまうのでしょうか。
それは、うつの原因はセロトニンだけではないからです。
脳の神経伝達物質は、興奮系のドーパミン、抑制系のGABAがあります。この2つのバランスを調節しているのがセロトニンです。
シーソーで例えると下図のように、支点の役割を担っています。
うつ症状を発症している方は、セロトニンだけでなく、ドーパミンやGABAの分泌量も減っています。ですので、セロトニンだけを補っても、肝心のシーソーのバランスが整いません。
うつ症状を改善するには、これらの神経伝達物質の材料となる栄養素をまんべんなく摂取することが重要です。
この神経伝達物質の材料となるのが、「タンパク質」なのです。このタンパク質は、何でも良いというわけでは無く、摂取すると体に悪影響を与えてしまうタンパク質があるのです。
カゼインタンパクが腸に与える悪影響
牛乳の主成分は、「カゼイン」というタンパク質です。牛乳のタンパク質には2種類あり、ヨーグルトの上澄みに出来る透明の液体が「ホエイ」と呼ばれるタンパク質、白くドロドロと固まっているものが「カゼイン」というタンパク質です。
牛乳の悪影響は、このカゼインタンパクの影響が最も大きいと言えるでしょう。
カゼインは、分解されにくい構造をしているため、消化されないまま小腸に到達し、その場に残ってしまいます。
健康な腸なら有害になることはありませんが、うつ病などの質的な栄養失調により腸が弱っていたり、腸内環境が悪かったりすると、腸粘膜に入り込み、炎症を起こしてしまうのです。
さらに、カゼインを構成しているペプチドが分解されないまま体内に入ってしまうと、脳の中枢神経に麻薬同様の作用をもたらします。
これは、カゼイン由来のグリアジンのアミノ酸配列が「モルヒネ」にそっくりなことから、脳が誤認識をして脳の受容体にくっついてしまうのです。
すると、シナプスから出てくる正常な神経伝達物質の分泌を阻害するため、こころの安定に必要なセロトニンやドーパミン、GABAなどが出づらくなったり、過剰に分泌されてしまったりします。
この結果、イライラする、うつ症状が出る、眠気が起きる、ぼーっとするというような、心身に悪影響を与えるのです。
胃腸や腸が健康な状態であれば、カゼインタンパクが腸粘膜に入り込むことは少ないので、牛乳の摂取は問題ありません。
しかし、うつ症状がある人は腸粘膜が弱っている可能性が高いので、牛乳の摂取はデメリットしかありません。
うつ症状の改善を目的とするなら、牛乳は避けた方が良いと言えるでしょう。
牛乳と同じく、ヨーグルトも危険!
牛乳と同じく、ヨーグルトもカゼインタンパク質が多く含まれています。ですので、ヨーグルトも避けた方が良いと言えるでしょう。
ヨーグルトは乳酸菌が多く存在し、腸内環境を改善させる働きがあると言われていますが、これは間違いです。
詳しくは、ヨーグルトはうつに逆効果! 分子整合栄養医学の観点からヨーグルトとうつの関係を解説!で解説していますので参考にしてみて下さい。
健康な人ならメリットも?
この記事では、「うつ症状のある人は乳製品を摂らない方が良い」と書いてきました。では、健康な人が乳製品を摂取すると健康にどのような影響があるのでしょうか。
実は、健康な人でも牛乳などの乳製品の摂取はオススメできません。
牛乳を飲むとカルシウムを補給できると言われていますが、実は乳製品を摂取することで骨がスカスカになってしまうからです。
これは、乳製品に含まれるカルシウムに対して、マグネシウムを含まないリンが多いからです。
牛乳には、確かに多くのカルシウムが含まれており、200ml中におよそ220mg含まれています。これは、成人男性の一日摂取推奨量の3分の1から4分の1を摂取することが出来る計算です。
http://www.jmftc.org/milk/seibun.html
しかし、カルシウムは摂取しただけで吸収されるとは限りません。栄養成分を見てみると、カルシウムとリンが多いことが分かります。リンが多いと、腸の中でカルシウムと結合してしまい、カルシウムの吸収を阻害してしまいます。そして、リンの血中濃度が上がることに比例してカルシウムの血中濃度が下がってしまいます。
体はカルシウムの血中濃度を一定に保つために、カルシウムの血中濃度を上げなくてはなりません。そのために、骨のカルシウムを使って血中濃度を上げようとしてしまいます。骨に良いと思って牛乳を飲めば飲むほど、骨の強化では無く骨がスカスカになってしまうのです。
また、カルシウムは脳の神経伝達物質を合成する際の補酵素としても必要です。カルシウムが不足すると、脳の神経伝達物質の合成も滞ってしまい、うつやイライラ等、様々な心身の不調がおこってしまいます。
もし摂取する場合は、マグネシウムなどのミネラルをサプリで補うなどの工夫が必要です。マグネシウムは、カルシウムの血管沈着を防いだり、カルシウムの働きをコントロールしてくれます。ただ、そうしたとしても牛乳などの乳製品は基本的に摂取しないほうが良いでしょう。
特に、うつ症状がある人は腸の状態が悪くなっている場合が多いので、牛乳や乳製品の摂取はオススメしません。更に腸内環境を悪化させ、栄養吸収不良になってうつ症状を悪化させかねません。
うつ症状がある人は、以下のような「メンタルに影響しない飲み物」を飲むのがオススメです。
どんな飲み物なら飲んでも良いの?
乳製品がうつ症状に悪影響があるなら、その他の飲み物はどうでしょうか。じつは、乳製品以外にも様々な飲み物がうつ症状に悪影響を与えてしまう可能性があるのです。
そのような飲み物を避け、メンタルに影響しない飲み物を飲むことがうつ症状の改善を早めるポイントとなります。
うつ症状を発症、悪化させてしまう飲み物や、うつ症状の改善に効果がある飲み物については、うつに良い飲み物、悪い飲み物とは? 分子整合栄養医学の観点から飲んで良いものと悪いものまとめ!で詳しく解説していますので、参考にしてみて下さい。
うつ症状がある人は牛乳を飲んではいけない! 分子整合栄養医学の観点から牛乳とうつの関係を解説!まとめ!
以上が、牛乳を飲むことによってうつ症状とどのような関係があるのかについてでした。
ここまでの流れをまとめると・・・
- 牛乳に含まれているトリプトファンは、決して多いとは言えない
- 牛乳に含まれているカゼインタンパク質は、腸が弱っているときに摂取するとうつを悪化させる
- うつの原因はセロトニンだけではない
- 牛乳に限らず、ヨーグルトなどの乳製品にも注意
- 乳製品はリンが多いため、カルシウムの吸収が阻害される
- うつ症状があるひとは、メンタルに影響しない飲み物を飲むのがオススメ
という感じになります。
牛乳がうつ症状に良いと思って飲んでいた方は、ショックが大きいのではないでしょうか。
うつ症状の改善には、腸の状態を良くすることが重要になってきます。それは、うつの原因の1つに「質的な栄養失調」があるからです。
質的な栄養失調とは、毎日お腹いっぱい食べているにも関わらず、食事の内容が悪かったり、腸の状態が悪かったりして栄養が吸収出来ず、栄養失調になってしまっている場合です。
このような場合は腸の状態を整え、至適量の栄養を補給してあげることがうつ症状の改善につながります。
ただ、腸の状態や必要な栄養素は人それぞれ違うので、一概に言うことが出来ません。
どうやって腸の状態を改善したり、栄養を補給したりすれば良いのかについては、うつぬきやのうつぬきコンサルティングで行っています。
うつ症状を早く改善したい方は、以下からうつぬきコンサルティングをご利用下さい。